会長あいさつ
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当協会が誕生したのは、終戦から10年を経た昭和30年、戦後の食糧不足はまだ続いており、「日本人の健康、食生活改善の問題は緊急を要し、かつ重大な意義を持つもの」として大蔵大臣をされた賀屋興宣氏(初代会長)と南喜一氏(初代副会長)を中心に経済界の強い支援をうけて厚生省(現厚生労働省)の施策に対する協力団体として設立しました。当時の平均寿命は男性63.60歳、女性67.75歳でありました。
翌昭和31年より栄養指導車(キッチンカー)を建造して全国で巡回指導を開始、バランスのとれた食生活について啓発を行いました。
この活動を通して食生活改善には地域ぐるみの活動が必要と認識され、ボランティア活動をする熱意のある婦人(食生活改善推進員の前身)を集め、「お隣さん、お向かいさん」活動を原点に全国に拡大していきました。
昭和45年には全国の食生活改善推進員は組織化され、現在では市町村の養成講座を受講した者が「私達の健康は私達の手で」をスローガンにボランティア活動に取り組み、その活動の活性化に日本食生活協会の柱を置き全国食生活改善推進員協議会の事務局として今日に至っております。
今日では飽食の時代となり、日本人の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳(厚生労働省 令和4年簡易生命表)に延び「人生100歳時代」といわれるようになりました。国民のライフスタイルや食生活、これらを取り巻く社会環境も大きく変わる中で、先人たちが全身全霊をかけて常に5年先、10年先を見据えながら、全ての国民が健康であることを願い活動を続けてきたことは現在の食習慣の形成と健康づくりに大きく貢献してきたと改めて実感しております。
先般、5月31日に厚生労働省より令和6年度からスタートする「健康日本21(第三次)」が公表され、「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」というビジョンのもと「①誰一人取り残さない健康づくりを展開する②より実効性を持つ取組を推進する」という方向性が打ち出されました。
当協会では、これまでの草の根活動の知識と経験を持つ食生活改善推進員が活動を通じて地域の健康づくりを応援する「ヘルスサポーター」の養成を再開します。ヘルスサポーターは食生活改善推進員と一緒にそれぞれのネットワークを活用しながら住民が一体となって健康づくりを普及することで、誰一人取り残さず、より実効性を持った健康づくりを図ります。
また、平成17年に「食育基本法」が施行され、翌18年に決定された「食育推進基本計画」においては食生活改善推進員をはじめとするボランティア活動の推進が食育の推進に関する重要な施策の一つとして位置づけられました。ボランティアという言葉が一般的でなかった時代から食育の根幹である「食べることは生きること」と進めてきた我々の活動が認められ、改めて食文化の担い手の中心として、食文化の継承を図るとともに、さらなる郷土料理の活性化を目的に当協会では「郷土料理スペシャリスト」の資格認定制度を立ち上げています。
近年のたびたび発生する自然災害や感染症拡大などを受けて、地域や人とのつながり「ソーシャルキャピタルの醸成」が再び重要視されています。「私達の健康は私達の手で」のスローガンに込められた先人たちの思いを受け継ぎ、仲間をつくり支え合う魅力を伝え、昭和・平成の時代と繋いできた志を大切に令和の時代も国民の健康づくり活動を続けて参ります。
令和5年10月
一般財団法人 日本食生活協会
会長 田中 久美子